狼と三人の娘
(イタリアの昔話)
昔々、よその村へ出稼ぎに行っていた、三人姉妹の娘たちがいました。 ある日、お母さんが重い病気にかかって死にそうだという知らせが届きました。「まあ、どうしましょう?」と、三人は相談しました。
「わたしたち、仕事に雇われているんだから、みんなで出かけるわけにはいかないわ。わたしが一番上の姉さんだから、行ってくるね」一番上の娘は、お母さんへのお見舞いの品に葡萄酒四本と、乾し杏入りのお菓子を四つ用意しました。
「行ってらっしゃい。気をつけてね」二人の妹は、姉さんを送り出しました。
お母さんのいるボルゴフォルテ村へ行くには、深い森の中を通らなければならないので、とても心配だったのです。深い森の中の道に、差し掛かりました。
すると突然、狼が飛び出してきました。「もしもし、娘さん。そんなに急いで、どこへ行くんだね?」狼は、立ち竦んでいる娘を怖がらせないように、猫撫で声で言いました。
「ボルゴフォルテ村の、お母さんのところへ行くんです。お母さんの病気が、重いそうですから」
「その籠には、なにが入っているんだね?」
「葡萄酒四本と、お菓子が四つ」
「じゃ、それをお寄こし」
「いいえ。これはお母さんへのお見舞いの品。あげるわけにはいきません」
娘は籠を、しっかりと抱えました。
狼は、二、三歩、そばへよってくると、今度は牙を剥き出しておどしました。
「くれないのかい。くれなくてもいいが、その代わりお前はどうなると思う? 籠の中身と命の、どっちが大事なんだ!」
娘は怖くなって、籠を放り出して妹たちのところへ逃げ帰りました。姉さんの話を聞くと、今度は二番目の娘が出かけることになりました。
お見舞いの品は、さっきと同じように、葡萄酒四本と、乾し杏入りのお菓子が四つでした。
「では、気をつけて行っておいで」
「狼に、出あわないようにね」一番上の姉さんと、妹が送り出しました。
深い森の中の道に差し掛かると、またさっきの狼が出てきました。
「もしもし、娘さん。そんなに急いで、どこへ行くんだね?」狼は猫撫で声で、優しく言葉をかけました。
「ボルゴフォルテ村のお母さんのところへ行くんです。お母さんの病気が重いそうですから」
「その籠には、なにが入っているんだね?」
「葡萄酒四本と、お菓子が四つ」
「じゃ、それをお寄こし」
「いいえ。これはお母さんへのお見舞いの品。あげるわけにはいきません」
「くれないのかい。くれなきゃ、お前はわしに食われるんだよ」二番目の娘も怖くなって、籠を放り出すと逃げて帰りました。
末の妹は、それを聞くと、「じゃ、わたしが行ってくるわ」と、言い出しました。
「大丈夫かい?」
「心配だわ」と、姉さんだちが言いました。
「任せてて。わたしには、いい考えがあるの」
そういうと、末の妹は台所へ行って、籠の中に葡萄酒四本をいれ、それからお菓子の中に、なにやらたくさん詰め込みました。
「じゃ、行っておいで。狼に、出あわないようにね」
「無事に行っておいで。お母さんにくれぐれも宜しくね」末娘は籠を抱えると、元気よくかけていきました。薄暗い森の中の道に差し掛かると、またも狼が出てきました。
でも、末娘は脇目もふらずに、ずんずんと足を急がせました。狼はそばへ来ると、また、猫撫で声で言いました。
「もしもし、娘さん。そんなに急いで、どこへ行くんだね?」「ボルゴフォルテ村のお母さんのところへ。病気が重いそうですから」
「その籠には、なにが入っているんだね」
「葡萄酒四本と、お菓子が四つ」
「じゃ、それをお寄こし」
「いいえ、あげるわけにはいきません。お母さんへのお見舞いの品ですから」末娘は怖そうな様子も見せないで、狼を見つめました。狼は、牙を剥き出して脅すことにしました。
「じゃ、それを寄こさねえというのか?」
「ええ、これはあげられないわ」
「寄こさなきゃ、お前はどうなると思う。わしに食われるんだぞ!」
「それなら、仕方がないわ。これをお食べ」末娘は大きく口を開けている狼めがけて、お菓子を一つ投げつけました。
狼はそれを、パクリと口で受け止めました。
そして、「ウギャーーァ!」と、叫んで、飛びあがりました。
実はお菓子の中には、釘がたくさん入れてあったのです。狼は口中血だらけになって、お菓子と釘を吐き出しました。
「覚えていろ。この仕返しは、きっとしてやるぞ」狼は、森の奥に逃げていきました。
でも、抜けめのない狼は森の近道を抜けて、ボルゴフォルテ村に先まわりしました。
そして、娘たちのお母さんの家に忍び込んで、病気で寝ているお母さんを、一飲みに飲み込んでしまったのです。
それから狼はお母さんの頭巾を被り、べッドに潜り込んで、末娘が来るのを待っていました。
しばらくして、末娘はお母さんの家につきました。「お母さん」末娘は、ベッドのそばへいってみて、お母さんのあまりの変わりようにびっくり。
だってお母さんは、色が黒くて、とても頭が大きくなってしまったからです。
それに、末娘に優しい笑顔を見せてもくれません。「お母さん、なぜわたしを抱いてくれないの?」 そのとたん、狼はバッと飛びおきて娘を一飲みにすると、そのまま表に飛び出しました。
でも、畑で働いていた村の人たちが、家から出ていく狼をみつけました。
そして手に手に、鍬や鋤をもって狼をおいかけ、叩きころしてしまいました。
お母さんと末娘は、狼のお腹の中から、無事に助けだされました。 それからお母さんは、利口な末娘の看病で、まもなく病気も治ったということです。
よそ (名) 别处;别人家。
乾(ほ)し杏(あんず) (名) 杏子干。
立ち竦(すく)む (自五) 惊呆;呆立不动。
猫撫(ねこな)で声(ごえ) (名) (哄骗人的)谄媚声;甜言蜜语的声调。
寄(よ)こす (他五) 寄来;送来;交给。
剥(む)き出す (他五) 露出;揭开。
中身(なかみ) (名) 内容,容纳的东西。
放(ほう)り出す (他五) 扔出去,抛出去。
差(さ)し掛(か)かる (自五) 来到;靠近;路过。
なにやら (副) 什么;不知为什么。
薄暗(うすぐら)い (形容) 发暗,阴暗。
脇目(わきめ)もふらず (惯用句) 目不转睛,聚精会神。
ずんずん (副) 不停滞地;飞快地。
足を急(いそ)ぐ (惯用句) 加快脚步。
脅(おびやか)す (他五) 威胁;威逼,威吓。
めがける (他下一) 以……为目标,朝着。
パクリ (副) 张开大嘴;大口吞食。
仕返(しかえ)し(名)报复,回击;报仇。
抜け目がない (惯用句)精明,万全,没有漏洞的。
先(さき)まわり(名)抢先到达;抢先行动。
忍(しの)び込む (自五) 潜入;悄悄进入。
一飲(ひとの)み(连语)一口。
頭巾(ずきん) (名) 兜帽,头巾。
潜(もぐ)り込む (自五) 钻入;躲入。
とたん (名) 正当……时候。
叩(たた)きころす (他五) 打死,揍死。
利口(りこう) (名 形动) 聪明,机灵。
看病(かんびょう)(名サ変)护理,看护。
狼和三个女孩
(意大利故事)
从前,有姐妹三个在别的村子里打工赚钱。
一天,她们接到了母亲病重的消息。
“怎么办呢?”三个人商量说。
“我们是被雇来干活的,不能都回去,我是大姐我回去吧。”
大女儿给母亲准备了四瓶葡萄酒和四块杏脯点心。
“一路走好,路上小心啊!”
两个妹妹送姐姐上了路。
去母亲住的波路高村,必须要经过一片茂密的森林,这非常让人担心。
大女儿刚要走进茂密森林的时候,突然跳出来一匹狼。
“喂,小姑娘,这么急急忙忙的要去哪儿啊?”
狼为了不吓坏惊呆了的大女儿,故作温柔地打招呼说。
“我去波路高村看望母亲,因为听说她病重了。”
“那篮子里装的是什么啊?”
“四瓶葡萄酒和四块点心。”
“送给我吧。”
“不行,这是看望我母亲的东西,怎么能给你呢?”
大女儿说着紧紧地抱住了篮子。
狼两三步就跑到了大女儿身边,露出了獠牙威胁说:
“你不给?不给的话,你知道自己是什么下场吗?是篮子里的东西重要,还是你的命重要?”
大女儿非常害怕,扔下篮子逃回妹妹们那里去了。
听了姐姐的话,这次该二女儿回去了。
她也准备了四瓶葡萄酒四块杏脯点心。
“那你要小心啊!”
“但愿不要遇到狼。”
大姐和妹妹把老二送出了门。
当她来到这片茂密的森林时,又遇到了上次那只狼。
“喂,小姑娘,这么急急忙忙地要去哪儿啊?”
狼柔声问道。
“我去波路高村看望母亲,听说我母亲病重了。”
“那篮子里装的是什么啊?”
“四瓶葡萄酒和四块杏脯点心。”
“送给我吧。”
“不行,这是看望我母亲的东西,怎么能给你呢?”
“不给?不给我就把你吃了。”
二女儿也非常害怕,扔下篮子跑回去了。
小女儿听了,说:“这次我回去吧。”
“你行吗?”“我们不放心啊!”姐姐们说。
“看我的吧,我有一个好主意。”
说着小女儿来到了厨房,把四瓶葡萄酒装到了篮子里,然后又往点心里装了很多东西。
“快去吧,但愿不要遇到狼。”
“如果能安全到家,你要好好地照顾妈妈。”小女儿挎着篮子精神抖擞地出门了。
当她来到光线已经有些黑暗的森林时,又碰到了那只狼。
但是小女儿目不斜视快步飞奔。
狼来到小女儿跟前,又柔声问道:
“喂,小姑娘,这么急急忙忙地要去哪儿啊?”
“我去波路高村看望母亲,听说母亲病重了。”
“那篮子里装的是什么啊?”
“四瓶葡萄酒和四块点心。”
“送给我吧。”
“不行,我不能给你。这是给我妈妈的东西。”
小女儿没有一点害怕的样子,盯着狼说到。
狼露出獠牙,威胁说:“你说什么?不给我?”
“嗯,不能给你。”
“不给我?你知道自己会是什么下场吗?会被我吃掉。”
“既然如此,没办法,把这个给你吧。”
小女儿朝着张着大嘴的狼,把一块点心扔了过去。
狼吧嗒一声用嘴接住了。突然,“哇!”的一声惨叫跳了起来。
原来小女儿在点心里放了很多钉子。
狼满嘴是血,吐出了点心和钉子,说:
“你给我记住了,我一定会报仇的。”说着,狼向森林深处逃跑了。
可是,狡猾的狼抄了近路,抢先到达了波路高村。
然后,潜入母亲的家里,一口吞掉了卧床不起的母亲。
接着,狼围上了母亲的头巾,钻进被窝,等着小女儿回来。
不一会,小女儿到家了。“妈妈!”
小女儿来到床边一看,被妈妈的模样吓了一跳。
妈妈什么时候变成黑色的了,脑袋还那么大,而且连一点笑模样也没有。
“妈妈,为什么你不抱抱我呢?”
就在这时,突然狼张开大嘴,一口吞掉小女儿,跑到屋外去了。
但是,在地里干活的人们发现了从家里跑出来的狼。
人们手里拿着铁锹、锄头追过来,把狼打死了,然后从狼肚子里救出了母亲和小女儿。
据说从那以后,母亲在聪明的小女儿的精心照料下,不久就恢复了健康。
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