ライオンと狐と鹿(前編)
ライオンが病気になって、洞穴の中で寝ていました。 このライオンは、一匹の狐と仲良しでした。 お見舞いに来てくれた狐に、ライオンは頼みました。「ぼくの病気を治したいと思うのなら、森にいる鹿を騙してここに連れてきてくれないか。ぼくは鹿の腸と心臓が食べたくてたまらないんだ」 狐は、鹿を捜しに行きました。 まもなく、森の中で跳ね回っている鹿が見つかりました。 狐は、鹿に近づくと、「あなたにいい話があります。我々の王様であるライオンくんが、いま病気で死にそうなんです。それでライオンくんは、自分が死んだ後の王様を誰にするか考えました。イノシシは頭が悪いし、熊はのろまだ。豹は怒りっぽいし、虎はすぐに威張る。そこで、鹿くんなら背が高くて立派だし、長生きするし、堂々とした角はあるしで、と、ここまで言えば分かるでしょう。ライオンくんは次の王様に、あなたを選びました。鹿くん、王様になりたいのなら、早くライオンくんのところへ行って下さい」 狐の話を聞いて、鹿はすっかり得意になりました。 そして、狐についていって、ライオンの洞穴に入りました。 たちまち、待ちかまえていたライオンが鹿に飛びかかりましたが、しくじって、鹿の耳を引き裂いただけでした。 鹿は一目散に、森に逃げ帰りました。「お願いだ。もう一度、なんとかして、あの鹿を連れてきてくれよ」「うーん、厄介で、難しいことを頼むなあ。まあいい。なんとかやってあげるよ」 そして狐は、まるで猟犬のように鹿の足跡をつけて行きながら、どうやって騙そうかと頭を捻りました。 途中、羊飼いたちにあったので、狐は、「血まみれになった鹿を、見かけませんでしたか?」と、尋ねました。「ああ、あそこの林の中の、塒にいるよ」洞穴(ほらあな):洞穴。
仲良(なかよ)し:好朋友。
見舞(みま)い:探望。
腸(はらわた):肠;内脏。
跳(は)ね回(まわ)る:跳来跳去。
イノシシ:野猪。
のろま:笨蛋。
怒(おこ)りっぽい:脾气大。
威張(いば)る:逞威风。
堂々(どうどう):威风凛凛;仪表堂堂。
得意(とくい):得意。
待(ま)ちかまえる:(做好准备而)等待。
飛(と)びかかる:猛扑过去。
しくじる:失败,失策。
引(ひ)き裂(さ)く:撕裂。
一目散(いちもくさん):一溜烟地。
厄介(やっかい):帮忙。
なんとか:想办法。
猟犬(りょうけん):猎犬。
足跡(あしあと):脚印。
頭を捻(ひね)る:费尽心机。
血まみれ:满身是血。
塒(ねぐら):动物的窝,自己的家。
狮子、狐狸与鹿(前篇)
狮子生了病,睡在山洞里。
这个狮子和一只狐狸是好朋友。
他对来探病的狐狸拜托道:“你若要我的病好,就请你把森林中的鹿骗到这里来,我很想吃他的肠子和心脏。”
狐狸去找鹿了。
不久,他看见树林里欢蹦乱跳的鹿。
狐狸走近鹿和他说:“我告诉你一个喜讯。我们的大王狮子他病得很厉害,快要死了。他正在考虑,自己死后,让谁继承他的王位。他说野猪愚蠢,熊迟钝,豹子暴躁,老虎骄傲自大,只有鹿的身材魁悟,又长寿,还有威风凛凛的角。我这么说你明白了吧?狮子选你作下一个大王了。鹿,你要想当大王就快点去狮子那里吧。”
听了狐狸的话,鹿非常得意。
于是跟着狐狸,进了狮子洞。
严阵以待的狮子立刻扑向鹿,可是失败了,只撕下了他的耳朵。
鹿一溜烟地逃回树林里去。
狮子对狐狸说,“求你了,再去一次,想办法把鹿给我带来。”
狐狸说:“你吩咐我的事太麻烦难办了,好吧,我尽力想办法去帮你办。”
于是,狐狸像猎狗似地寻找鹿的脚迹,同时绞尽脑汁想怎么骗鹿。
途中,遇见牧羊人,狐狸问:“有没有见到一只浑身是血的鹿啊?”
他们说:“鹿在树林中的窝里呢。”
ライオンと狐と鹿(後編)
教えられた狐は、休んでいる鹿のところへ行って、澄ました顔であいさつをしました。
鹿はカンカンに怒って、毛を逆立てて言いました。
「汚らわしい狐め! もう、騙されないぞ。そばに来たら命はないと思え。お前がどんな悪者か、知らないやつを騙しに行くがいい。王様にしてやると言って、煽ててやれ」
すると、狐は、「あんたは、それほど腰抜けの卑怯ものなのかい。そんなふうに、わたしたちを疑るなんて。ライオンくんがあんたの耳を掴まえたのは、王様になった時の心構えを教えようとしたんだよ。それなのにあんたは、病気のライオンくんがちょっと引っ掻いたのも我慢出来ないなんて。あんたの不甲斐なさに怒ったライオンくんは、今度は狼を王様にすると言っているよ。困るなあ。乱暴ものの狼が王様になっては。だからさ、わたしと一緒に来てくれよ。ライオンくんが、あんたに害を加えるはずがない。わたしが保証するから」
こんなふうに、狐は鹿を言いくるめて、もう一度ライオンのところへ連れて行きました。
鹿が洞穴に入ると、ライオンは、今度はご馳走を逃さないぞとばかり、骨から腸まで、ガツガツと食べてしまいました。
狐は、そばで眺めていました。
その足元に、鹿の心臓が零れ落ちました。
狐はそれをさっと拾って、さんざん働かされた埋め合わせにと、ぺろりと食べてしまいました。
ライオンは、腸を端から食べましたが、心臓だけが見つかりません。
「心臓は、どうしたのだろう?」と、しきりに捜しています。
それを見て狐は、ライオンの手の届かないところまで逃げてから言いました。
「この鹿には、もともと心臓がなかったから、捜しても無駄だよ。だって、普通の心臓を持っている動物なら、ライオンの住処へ2度も、のこのこやってくるはずがないだろう」
このお話しは、偉くなって威張りたいという気持ちがあんまり強いと、物事を見極める事が出来なくなり、危険が差し迫っているのにも気がつかない、ということを教えています。
澄(す)ました顔:装做一本正经。
カンカン:大怒。
逆立(さかだ)てる:倒竖。
汚(けが)らわしい:卑鄙。
悪者(わるもの):坏蛋。
煽(おだ)てる:给戴高帽,捧,挑唆。
腰抜(こしぬ)け:胆怯。
卑怯(ひきょう)もの:卑鄙的家伙;胆小鬼。
疑(うたぐ)る:怀疑。
心構(こころがま)え:思想准备。
引(ひ)っ掻(か)く:挠。
我慢(がまん):忍耐。
不甲斐(ふがい)ない:没出息;窝囊。
乱暴(らんぼう)もの:粗鲁的人。
害(がい)を加(くわ)える:加害。
言(い)いくるめる:用花言巧语(哄骗)。
ガツガツ:贪婪地吃。
零(こぼ)れ落(お)ち:脱离,落下。
さっと:突然。
さんざん:狠狠地,彻底地,狼狈。
埋(う)め合(あ)わせ:弥补。
ぺろりと:很快地吃完。
端(はし):头,端。
しきりに:再三。
住処(すみか):住处。
のこのこ:满不在乎。
見極(みきわ)める:看清楚;分清。
差(さ)し迫(せま)る:迫切。
狮子、狐狸与鹿(后篇)
按照牧羊人的指引,狐狸来到鹿正在休息的树林,装模作样地□来到鹿的面前和他打招呼。
鹿非常生气,气得毛都竖了起来了,说:“卑鄙的东西,你休想再来骗我了!你再靠近,就没命了。你去欺骗那些不知道你有多坏的人,鼓动他们做大王。”
狐狸说:“你怎么这样胆小懦弱?竟然那么怀疑我们。狮子抓住你的耳朵,是要教你作大王的思想准备罢了。可是,你却连生病的狮子那稍微的一挠都受不住。现在狮子对你的没出息感到非常生气,这回说要将王位传给狼。要是残暴的狼当上大王可怎么办呀!所以,快跟我来吧。我向你起誓,狮子决不会害你。”
这样,狐狸花言巧语欺骗了鹿,再一次把它带到了狮子那里。
鹿刚一进洞,狮子就以一定不让他再逃掉的态势,把鹿抓住贪婪地饱餐了一顿,连骨头,肚肠都吃光了。
狐狸站在一旁看着。
鹿的心脏掉到了狐狸的腿边。
狐狸一下子捡起来,把它当作弥补自己辛苦的酬劳,一口吃了。
狮子从肚肠开始从头吃,可就是没找到心脏。
狮子说:“心脏怎么没了?”仍不断的寻找鹿的那颗心。
狐狸见此逃到狮子够不到的地方说:“这个鹿本来就没有心,找也没有用。你想,一般有心脏的动物怎么会毫不介意地两次走到狮子家里呢。”
这则故事告诉我们,要是过于想变得了不起,逞威风,就无法分辨事情的真伪,不能发现危险的迫近。
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